世界中が君の敵。1
自分自身に迷いを抱いた。
確かに木の葉崩しにより多少は変化があった…と思う。
それのせいかもしれないがまるで偽善者みたいで気持ちが悪い。
「我愛羅、いるのか?」
姉であるテマリの声がすぐ近くで聞こえた。
…また、知らぬ間に考えていたらしい。最近はいつもそうだと思う。
「………」
「何だ、いるじゃないか」
襖が開いてテマリが自分を見下ろしている。
木の葉崩し以来、テマリは我愛羅に対してしゃべりかける事が多くなった。
何故なのか、我愛羅には分からないが明らかな事実だ。
「何か用か…」
テマリを見ずに小さく呟くとまた頭上から返事が返ってきた。
「ああ、実は明日の任務についてなんだが…」
そう言って、テマリは我愛羅の真正面に腰を下ろし、口を開いた。
「明日の任務、木の葉に行く」
「木の葉に?」
顔を上げて思わず、すぐに返事をすればテマリは驚いた表情をした。
はっとしてまた視線を元に戻す。
……らしくない。不覚だった。
「別に行くのが嫌なら断ってもいいんだ」
どうやらテマリは我愛羅が木の葉には行きたくない、と感じとったらしい。
「ちなみに、初のAランク任務だ」
「…内容は?」
「うーん、そうだな…詳しくは知らないが…分かる事は……」
テマリは腕を組み低く唸った。
“Aランク任務”それに微かに反応する。
「ある忍びを暗殺する事」
一通り唸り終えた後、テマリは人差し指を立て、威圧のある声で言った。
ずばり、暗殺である。それも木の葉の忍び。
テマリによれば年齢、性別など等の詳しい事は当日バキから聞かされるらしい。
我愛羅はじっと床を見つめ、考え込んだ。
「我愛羅、さっきも言ったように断ってもいいんだからな?」
何も返事をしない我愛羅を覗き込むようにテマリは弱々しく言った。
「だって木の葉だもんな。何も今じゃなくても…」
「その任務、決行する」
「………」
テマリの言葉をかき消すように言えば、彼女は唖然としていた。
そして弾かれたようにその場を立つと襖に手をかけ、我愛羅を見ずに言った。
「…そう、伝えておく」
それだけ言い、テマリは襖を開け出て行った。
襖が閉まり、我愛羅以外、誰も居なくなったそこはまた無言が広がる。
ちらっと窓から空を見上げれば日が沈む最中だった。
また、あの気持ちが込みあがってきて顔を歪める。
…恐らく、今夜も月を見上げる事になりそうだ。
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